うたたねの夢や現に通ふらむ覚めてもおなじ時雨をぞ聞く
千載集・藤原隆信
おもひねの夢に慰む恋なれば逢はねど暮のそらの待たるる
千載集・摂政家丹後
仮寝(うたたね)に果(はか)なくさめし夢をだにこの世に
または見でや止みなむ 千載集・相模
春の夜の夢ばかりなる手枕にかひなく立たむ名こそをしけれ
千載集・周防内侍
見るゆめの過ぎにしかたをさそひきて覚むる枕も昔なりせば
千載集・藤原家隆
これや夢いづれか現はかなさを思ひわかでも過ぎぬべきかな
千載集・上西門院兵衛
人ごとにかはるは夢のまどひにて覚むればおなじ心なりけり
千載集・藤原兼実
驚かぬわが心こそ憂かりけれはかなき世をば夢と見ながら
千載集・登蓮
千載集・相模は、うたたねの夢に見たあの人との仲は、この世でまた見ないままになるのであろうか、と詠う。
周防内侍のこの歌を本歌取りした塚本邦雄の歌「春の夜の夢ばかりなる枕頭にあっあかねさす召集令状」は有名。
登蓮(とうれん)は、平安時代後期の歌人、僧。中古六歌仙のひとり。僧侶としての悟りの境地を憂鬱に感じていたのであろうか?