天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

熱海―梅と桜と起雲閣

糸川にて

閑話休題
この時期になると例年、熱海に出かけて梅の花と桜を愛でる。今回は、まず起雲閣を見学した。以前庭園には入ってみたことがあるが、中の部屋々を巡ったのは今回が初めてであった。入館料は、大人510円。大正・昭和の浪漫にあふれていて、上品な日本の住まいを見る思いがした。いくつもの部屋が連なっているが、それぞれ別の時期に建て増されたようだ。最初の建物は、大正8年に海運王・内田信也によるもの(麒麟)。その後、鉄道王根津嘉一郎昭和4年(洋館・金剛)、7年(玉渓、玉姫)などに増設した。外観からは想像もつかないが、内部に入るとモダンな建築様式に感心させられる。昭和22年から旅館に変った。多くの文人たちも宿泊した。山本有三志賀直哉谷崎潤一郎舟橋聖一太宰治武田泰淳など。現在は熱海市営の観光施設になっている。たまたま企画展示室では、俳優の榎木孝明の水彩画展が開催されていた。
起雲閣を出て、歩いて糸川に行った。熱海桜は満開。両岸に沿って咲いていて川に被さるほどである。目白たちが飛び交っていた。桜まつりは2月11日まで。
糸川のはずれからバスで熱海梅園に向かった。入園料は大人300円だが、熱海に宿泊することが証明できれば100円にしてもらえる。梅の種類が多いので、どれかが花の時期を過ぎても別の梅が咲き始める。蝋梅、白梅、紅梅と見ることができた。ただ、桜の華やかさに比べると穏やかで静かな印象である。よく晴れていたが、風はさすがに冷たかった。屋台でぬる燗の日本酒に烏賊裂きを食べた。
今回もかんぽの宿に一泊して、温泉で疲れを癒した。帰宅しては藤沢で買ってきた大吟醸の「獺祭」を冷やして飲んだ。


     文豪の部屋より見たる桜かな
     糸川にかぶさる熱海さくらかな
     花に来てインスタ映えの目白かな
     空青き熱海梅園猿回し
     梅園を笑はせてをり猿回し
     蝋梅に白梅紅梅かさね撮る
     梅園の奥に湧きたる足湯かな
     きさらぎの朝日まぶしむ熱海の湯


  文豪の泊りし部屋の並びたり近代日本を見る起雲閣
  川沿ひの熱海桜に目白群れインスタ映えを狙ふ人々
  蝋梅に白梅紅梅かさなれる視点さだめてシャッターを押す
  梅、桜、起雲閣見て一泊はオーシャンビューのかんぽの宿
  山上の出湯に浸り見わたせば相模の海に夕日が沈む
  大吟醸「獺祭」飲みて悦に入るインスタ映えの写真見ながら