天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

ウミネコ

海猫

海猫はカモメ科の鳥。日本近海の沿岸や島に生息する。五か所には集団で繁殖しており、天然記念物になっている。黄色い嘴の先端に赤と黒の模様があるところで、他のカモメと区別される。猫のような鳴き声で啼くところから名前がついた。魚に群れるので魚群発見に役立つとされる。海猫と書いて「ごめ」ともいう。


  海猫はいまも啼きたつ心(うら)細る雪の夜ふけのわれに迫りて
                      木俣 修
  照らされし赤き濁流の上にして群れつつぞゐる海猫のこゑ
                      岡部文夫
  雛いだきしづまりてゐる海猫のこゑなき哀れ近く見てたつ
                     佐藤佐太郎
  海猫は雛はぐくみて粥のごと半消化せる魚を吐き出す
                     佐藤佐太郎
  海猫の風にたゆたふ一瞬の光崩れて声啼きにけり
                      千代国一
  海猫のとどまる巌(いはほ)くろきうへ舞へるいく羽は光となりぬ
                      千代国一
  ぼんやりと海に日の差し人を見ず八戸鮫町は海猫のこゑ
                      恩田英明
  くらぐらと雪風(し)巻くときうみねこの白(しろ)点となり消ゆるわたなか
                      原田律子
  つばさも胸もごめは曇りの色なるにひるがへるときどこかが光る
                      大塚陽子
  繁殖の地としてうみねこ群れ棲めり愛しき鳴き音こもごも曳ける
                      今村充夫
  蕪島の夏空ひくく飛ぶ海猫(ごめ)のひるがへりざまかすかに足掻(あが)く
                     勝倉美智子


 以上の作品では、鳴き声、飛翔の瞬間、子育て、群の姿 などに注目して詠まれている。
ところどころに主観語が入っているが、おおかた客観写生である。

[注]掲載の画像は、NHK BSテレビ「美景・絶景 日本列島再発見」から借用した。