岬のうた
辞書によると、岬・崎(みさき、さき)は、丘・山などの先端部が平地・海・湖などへ突き出した地形を示す名称。「さき」は「先」の意味で、「みさき」と読む場合の「み」は接頭語。
遠き岬(さき)近き岬岬(さきざき)とうちけぶり六月の海のみどりなる照り
窪田章一郎
眺めつつ来ても岬はまだ遠し海も空もただ光にけぶる
植松寿樹
かの遠き岬の端にゐる雲の心となりて何を呼ぶべき
安田章生
岬(さか)をあらふ寒(さむ)潮(しほ)のおとわが胸を洗ふがごとくによもすがら鳴る
木俣 修
波暗くうごき雲うごくあひだにて雪の岬はしづかに白し
長澤一作
ともに来しをとめたちよりやや離れ春の岬に立ちて放屁す
安立純生
鬩ぎ合ふ海と陸との伊良湖岬心の鷹の飛び立ちやまず
駒田善治郎
岬の全体が見渡せる場所に立つ時、どのようなところに注目するか。初めて訪れた場合、故郷とする場合 それぞれで感懐は違うであろう。岬の名前が分ると共感しやすいのだが。
駒田善治郎は、歌枕を意識したのだ。この伊良湖岬は、秋に数千羽のタカ類が渡る中継地点として有名。周知のように、この地を詠った作品に
うつせみの命を惜しみ浪にぬれ伊良湖の島の玉藻刈り食す 麻績王(おみのおおきみ)
浪もなしいらこが崎にこぎ出てわれからつけるわかめかれあま 西行
鷹ひとつ見つけてうれし伊良湖岬 芭蕉
などがあり、歌碑、句碑として岬の先端周辺に立っている。さらに島崎藤村「椰子の実」の詩碑もある。