道づくし(1/11)
―この道や都大路も極道も―
東山魁夷の代表的な絵「道」について、それを描いた経緯が東山魁夷の画集に紹介されている。要約すると、モティーフは十数年前の写生からで、燈台や放牧の馬等が見える風景であった。それを道と周囲の草叢だけに省略して、夏の早晨の空気の中に描いた。この作品の象徴する世界は彼にとっては遍歴の果てでもあり、又、新しく始まる道でもあった。それは絶望と希望の織り交ぜられたものであった。
この絵に代表されるように、道は絵画のみならず文芸作品の重要な情緒を形成する場合が多い。
俳句では芭蕉の「此道(このみち)や行人(ゆくひと)なしに秋の暮」があり、
詩では高村光太郎の「道程」 ”僕の前に道はない 僕の後ろに道は出来る ”
あるいは、北原白秋の「この道」
”この道はいつか来た道、ああ、そうだよ、あかしやの花が咲いてる ” など。