天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

道づくし(7/11)

古今和歌集(岩波文庫)

いよいよ形而上学的道として、「夢路」「こころの道」「あの世への道」などがある。

 夢路にも露やおくらん 夜もすがら通へる袖のひちてかわかぬ
                  古今集紀貫之
 奥山の岩がきぬまのうきぬなは深きこひぢに何みだれけむ
                 千載集・藤原俊成
 ゆふ風に萩むらの萩咲き出せばわがたましひの通りみち見ゆ
                  前川佐美雄『大和』
 つひにゆく道とはかねてききしかど昨日今日とは思はざりしを
                  古今集在原業平
 鋸屑(おがくづ)をとり除きたる氷のおもてより死に入りゆく径のありや
                  葛原妙子『葡萄木立』
 母胎より彼岸に到るここの道いましばらくの緋なる夕映
               富小路禎子『柘榴の宿』


次は、道徳、ある専門的分野を指す道、精神性を付与したスポーツやご政道の道。

 やは肌のあつき血潮にふれも見でさびしからずや道を説く君
                 与謝野晶子『みだれ髪』
 あたらしくひらきましたる詩の道に君が名讃へ死なむとぞ思ふ
                   山川登美子『恋衣』 
 柔道三段望月兵衛明眸にして皓歯一枚を缺きたり
                塚本邦雄歌人』 
 おく山のおどろがしたもふみわけて道ある世ぞと人に知らせむ
               新古今集後鳥羽院
 平らけき道うしなへる世の中をゆりあらためむ天地(あめつち)のわざ
                  野村望東尼『向陵集』
 この後に続かん道の意味を知らず心輝きて屋上に居し
                岡井隆『斉唱』


後鳥羽院、望東尼、岡井らの道は、政治を暗示している。