天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

AIと短歌

わが著書(電気書院から)

最近AI(Artificial Inteligennce: 人工知能)の実用化が広い分野で話題になっている。私が25年前に執筆した『人工知能コンピュータ』(右画像に示す)では、もの(画像、物体、音声など)の認識技術が主要課題であったが、現在ではビッグ・データに基づく深層(ディープ・)学習(ラーニング)が技術の主体になっており、AIの実用化が急速に進んだ。将棋や囲碁の世界では、名人でさえAIには勝てないレベルに進化している。ルールが決まっていれば、天文学的な組合せの中から勝にいたる道をAIは見つけることができるのである。自動運転や自動言語翻訳なども実用レベルに達している。絵画でも有名画家の作風を人間よりもはるかに精密にまねることができる。
AIを短歌に応用するとどんなことができるであろうか。題を与えて短歌を自動作成する、人が作った短歌をAIが評価・添削する などが可能になるだろう。そのためには、短歌を解析する技術(自然言語処理)が中心になる。短歌の基本ルール(五句三十一音、枕詞、掛詞、韻律、表記法、文法 など)を整理しておけば、名歌作品集から名歌の条件を抽出することが可能になる。ただこうした作業には相当な人工・費用が必要になる。将棋や囲碁のAIは、買い手あまたであろうから開発する元気は出よう。では、俳句や短歌ではどうか。
AI(機械)に負けるからといって、ゲームや文芸・芸術から遠ざかるであろうか。そうはならないはず。人の間のコミュニケーションが人間社会の基本であるかぎり、AIの介在如何によらず廃れない、と思われる。
昨年、「短歌人」誌に、「AIの世紀」と題して以下の作品を掲載した(小池 光さんの選)。


 名人のとらざる一手に勝機ありPONANZAの手に頭かかへる
 PONANZAの将棋指す手に頭を下ぐる二度目も負けし佐藤天彦
 AIの打つ手をまなぶ棋士たちが王座を競ふ時代来たれり
 「天才のそうちゃん」と呼びひふみんが中学生の棋譜を読み解く
 四半世紀の昔となりぬわが著書の『人工知能コンピュータ』は 
 相場師に株取引の出番なし 利益をかせぐAIトレーダー
 そのうちに俳句短歌をAIがつくる日もくる楽しからずや