死を詠む(7)
われの死がかずかぎりなき人間の死になるまでの千日千夜
竹山 広
死ぬときは死ぬとかならず言つてよと泣きゆきし妻しづかになりぬ
竹山 広
劇中の死なれば人はうつくしき言葉をいひて死にてゆきつも
竹山 広
はつなつのゆふべひたひを光らせて保険屋が遠き死を売りにくる
塚本邦雄
「死」を措けば生の主題のおぼろなる山紫陽花の盛り過ぎつつ
塚本邦雄
百日紅うつつに白く咲きさかり母のねむりは死にまぎれおり
松坂 弘
樹の影に入りておのれの影を消すあそびのやうな死があるはずだ
外塚 喬
死を安きごとく居しかどひとところ病めばたちまち生きたかりけり
田井安曇
竹山の二首目は、妻の言動が胸をついて哀切! また松坂の歌は、母が眠りと死の境界をさまよう状態を詠んで、いたたまれない気持にさせる。田井安曇の歌は、みんなが抱く思いであろう。
塚本の二首目は、死に比べて「生の主題」がはっきりしない、と詠っている。確かにそうかもしれない。