天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

犬を詠う(2/12)

サルーキ

  雨に濡れ身をふるはする野良犬はみみずの這ふを
  嗅ぎゐたりけり           岩田 正


  自然との交歓は犬にまさるなし雨のあしたの土の
  香を嗅ぐ              岩田 正


  疵(きず)を舐めをはれる犬がしづかなる二つの耳を
  天に向けたり            畑 和子


  犬に踏まれ昨年花無かりしゆきのした犬失せしかば
  此年咲きぬ             畑 和子


  野良犬を追ひ返すべく棒投げぬ棒かんと藪の竹に
  鳴りたり             前川佐美雄


  付きて来し犬の姿が忽然と消えたるあたり青き空間
                    大野誠
  吹き荒るる一夜鎖にあらがひし犬が眠れり落葉の溜りに
                    三國玲子


畑和子の二首目: 犬がゆきのしたを踏みにじったために花が咲かなかったという。野良犬の仕業だったか。注目点が珍しい。
大野誠夫の歌: 結句が謎めく。犬がこの世のものでなかったように思わせる。
三國玲子は、東京都出身。鹿児島寿蔵に師事した。各種の賞を受賞したが、鬱病のため入院し、同病院で飛び降り自殺した。
右上の画像の犬は、サルーキという犬種で、その歴史はおよそ7000年溯ることが出来るという。狩猟犬として飼われてきた。