天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

犬を詠う(3/12)

柴犬

  犬は縁にわれは畳に寝そべりて暑きまひるをむかひてゐたる
                         安田章生
  犬などにけだものの臭(にほ)ひ淡きこと互に長く親しみしかば
                        佐藤佐太郎
  路地にゐる犬を怖れて進み得ぬまで年老いて衰へにけり
                        佐藤佐太郎
  犬を憎み憎みて何も出来ぬ老犬はばかにして苗ふみ散らす
                         土屋文明
  記憶さへまぼろしに似てわが夜々に毳立つ犬の地に垂らす耳
                         小國勝男
  尾を追ひてまはる仔犬よ音符の輪きらきらしくて島の日だまり
                        春日井 建
  にんげんのわれを朋(とも)とし犬の愛きわまるときにわが腓(こむら)噛む
                         坪野哲久


佐藤佐太郎の二首目と土屋文明の歌は、老いてから犬に対する感情が共通している。
春日井建の歌の三、四句目「音符の輪きらきらしくて」は、「尾を追ひてまはる仔犬」の情景を比喩したものだろうが、凝りすぎた表現に感じられる。
坪野哲久は佐藤佐太郎や土屋文明に比べて、犬との付き合い方が親密だったようだ。
右上画像にあげた柴犬は、日本原産の日本犬(6種)のうちの一種で、もっとも多く飼われている。遺伝的には古くからの血を受け継ぐ現存古代犬種の一つとされる。性格は大胆で独立心が強く、頑固な面もあり、主人に対して忠実。