犬を詠う(11/12)
犬居らずなりし犬小屋とほるたび犬のかたちの闇がみじろぐ
丹波真人
花の奥にさらに花在りわたくしの奥にわれ無く白犬棲むを
水原紫苑
好色な男であるよ這ひのぼる蔓先までを嗅ぎめぐる犬
上村典子
あるときはさみしい顔の犬が行くわたしのなかの夏草の径
小島ゆかり
犬はふと胴震ひせり人間はそしてどこまで時雨れてゆくのか
小泉史昭
歳月を押し流しゆく朝焼けの西貢(サイゴン)川の橋の上の犬
谷岡亜紀
メロンパン犬と分けあふ昼さがりお前も私も微塵のいのち
渡辺茂子
一首目: 確かに下句のような情景を感じることがある。
二首目: 水原紫苑には思い焦がれている白犬がいるのだろう。
三首目: 雄犬のふるまいを好色だと感じた。
四首目: 作者の心象風景として詠ったものだが、比喩表現なので鑑賞は読者まかせになる。
五首目: 「ふと」と「そして」の措辞が巧み。
六首目: 上句と下句がよく呼応して歴史を感じさせる。
七首目: この歌も上句と下句がよく呼応して、読者は納得する。
画像の犬種はチャウチャウ。紀元前から中国にいた地犬。古くは肉を取るための食用や、コートを作るために毛皮を取るための毛皮用家畜として飼育された、とのこと。現在は世界中に輸出されていて、愛玩犬やショードッグとして広く親しまれている。