天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

犬を詠う(12/12)

ダックスフント

  朝戸出の我を見上ぐる白犬の静かに夏の陽の中に老ゆ
                        吉村明美
  柴犬とダックスフントが朝の出会ひ ジーパンの女二人が会釈
  こぼれて                大久間喜一郎


  舌長くスープの皿をなめまわすむく犬はまだ目を描かれず
                        川口常孝
  室内に水ありしところ亡き犬はまたあらわれて水を飲みおり
                        高島静子
  犬が唄ひ夏椿散り豆腐屋の自転車が息つきてゐる夕暮れの坂
                        藤井常世
  残り香も絶えて虚しき犬小屋のかたへの土にすみれ萌えをり
                        桐 初音


川口常孝は、スープの皿をなめまわすむく犬の絵を描いていたようだ。なお、むく犬は毛のふさふさと垂れた犬の俗称で、犬種ではない。
高島静子はありし日の愛犬の幻を見ている。
藤井常世は夕暮の坂の情景を歌にした。
桐初音も愛犬が亡くなって虚しく犬小屋だけが残った情景を詠んだ。
画像の犬はダックスフントでドイツ原産。ダックスフントとは「アナグマ犬」を意味する。巣穴の中にいるアナグマを狩る目的で手足が短く改良された。胴長短足の体型。