2014年7月21日のブログ「和歌に詠まれた滝」他で、折に触れて滝の作品を取り上げたが、このシリーズでは、現代までを含めて短歌の場合をまとめてみた。
滝は奈良時代には「たぎ」と濁った。滝には、激流と垂水の二態がある。澪は滝水の流れるところ。
語源は「たかき(高)」「とき(疾)」あるいは「たぎつ(激)」。大伴家持の歌にある田跡川は、養老の滝を源とする川で、現在の養老川のこと。
幾多(いくばく)も降らぬ雨ゆゑわが背子(せこ)が御名(みな)の
幾許(ここだく)滝もとどろに 万葉集・作者未詳
神の如(ごと)聞ゆる滝の白波の面(おも)知る君が見えぬこのころ
万葉集・作者未詳
石走(いはばし)る滝もとどろに鳴く蝉の声をし聞けば都し思ほゆ
万葉集・大石蓑麿
田跡川(たどかわ)の滝(たぎ)を清みかいにしへゆ宮仕へけむ
多芸(たぎ)の野の上(へ)に 万葉集・大伴家持
落ちたぎつ滝のみなかみ年積り老いにけらしな黒きすぢなし
古今集・壬生忠岑
おもひせく心のうちの滝なれやおつとは見れど音のきこえぬ
古今集・三条町
こきちらす滝の白玉ひろひおきて世の憂きときの涙にぞ借る
古今集・在原行平
春立ちて風や吹きとく今日見れば滝の澪(みを)より玉ぞ散りける
古今和歌六帖・紀 貫之