天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

滝のうた(4/6)

那智の滝(webから)

  滝の水は空のくぼみにあらはれて空ひきおろしざまに落下す
                     上田三四二
  千年の杉みな濡れて落つる瀧かがやくみづはこずゑに高し
                     上田三四二
  夢窓国師作るところの心地庭(しんちてい)男滝女滝の音の
  しづけさ                野村 清


  崖高き青葉の中より一条(ひとすぢ)の垂れし白絹女滝(め
  たき)とぞ呼ぶ             磯 幾造


  那智山の杉群に白々現るる飛瀑につどふ神々のこゑ
                      白石 昴
  伏し拝み伏し拝みして離(さか)りきつ那智のみ滝は夜目
  しろく立つ               岡野弘彦


  峡ふかく立ち氷(ひ)となりてしづまれる滝ありてわれの心を
  誘(おび)く               岡野弘彦


  紙垂白く吹かるる見ればいにしへとかはらず人は滝を尊ぶ
                      大西民子


上田三四二の一首目は、滝の代表歌として有名。三首目の心地庭(しんちてい)とは、心地よい庭のこと。那智の滝は、瀧篭修行の行場として扱われた那智四十八滝のうちの一の滝を指し、石英斑岩の断崖に沿って落下、滝壺までの落差は133メートル。その姿は熊野灘からも見える。