天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

滝のうた(6/6)

称名滝

  ただよへる白き雲をも攫(さら)ひしか滝りんりんとひかり
  を増しぬ               春日真木子


  凍りたる滝を見上げて立つわれは寒き柱を身の内にもつ
                      柏崎驍二
  宙空のみどりごに乳与へゐる滝の母性の轟きつづく
                      岩井謙一
  藤の花うすむらさきの宙に垂れ地にはとどかぬ未完なる滝
                      岩井謙一
  みどり裂き滝一条に落ち白み音に吸ひこむ浄土幽けし
                      大滝貞一
  全山の雨滴あつめて一口にはき出す如し激つ滝口
                     池田二美代
  濃みどりの森に照る陽の白く炎えて人恋しさが滝となる午後
                      今井恵子
  あれは滝ここは紅葉とささめゆき降るやうならむ旅の時間は
                     池田はるみ


以上のいくつかの作品には、比喩や擬人法が使用されている。
春日真木子: 滝が白雲を攫う。「りんりんと」はオノマトペ
柏崎驍二: 身の内の寒き柱は何を比喩しているか? 不信感か絶望感か。
岩井謙一の一首目: 滝が宙空のみどりごに乳を与えている、という擬人法だが、「宙空のみどりご」は滝の周辺にある植物の比喩であろう。
大滝貞一: 眼前の滝の情景に浄土を想っている。
池田二美代: 滝が雨滴をはきだす、という擬人法。