天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

うなぎ供養

ニホンウナギ(WEBから)

今年の短歌人夏季集会は、浜松駅前のホテルで7月末の土、日に開催された。数日前から異常な経路をたどる台風に、参加をためらったが、日曜日の歌会のみに参加することでなんとか台風を避けることができた。台風が浜松に来るまでのわずかな時間を浜松城公園で過ごした。
浜松と言えば鰻が食自慢の土地。実は、私は鰻は大好物だったのだが、数年前に日本鰻が絶滅危惧種であることを知って以来、食べなくなっていた。ところが短歌人夏季集会を浜松で開催となり、多分参加者はうなぎを食べることを楽しみにしているだろうことを念頭に、我が身に寄せて次の詠草を予め提出しておいた。
  食欲は消え失せにけり浜名湖のうなぎもすでに絶滅危惧種
案の定、歌会ではまことに不人気であった。歌の内容は、事実なのだが、嫌がらせをしているようなものだからである。
この機会に供養を口実にひとりで浜松の鰻を食べてみることにした。鰻(う)ざく、冷酒(静岡の地酒「花の舞」)、うな重を注文した。「旨かった、ありがとう。」を供養の言葉とした次第。ただ今後は、やはり鰻を食べることは避けたい。


     湧き上がる蝉しぐれ聞く天守
     炎熱の街見下ろせり天守
     銅像は若き家康蝉しぐれ
     天守閣めぐりて後の冷酒かな
     うな重を鰻供養と言ひて食べ
     雷帝のあとを炎帝引き受けて
     手加減の無き炎帝の怒りかな
     炎帝に手加減を乞ふ暑さかな


  この国の食ぶるうなぎの多ければ絶滅危惧種となるにけむかも
  その頃は絶滅危惧種にあらざればうなぎ好みし斎藤茂吉
  雷帝のあとを引き受け炎帝が水害の地に熱を振り撒く
  傘雲のいまだのこれる富士の嶺天竜川の水面静けし
  台風の置き去りにせし雲のむれ富士につながり重くただよふ