墓を詠む(6/8)
叔母の死を弔ひに来し 村の墓。山ふところに陽はあたたかし
岡野弘彦
おん墓の静まる彼方竹群の秀(ほ)の上ゆるく鐘わたりゆく
若浜汐子
札幌の街並遠き墓に来て彼岸尺余の残雪を掘る
足立敏彦
人の祈りのかく咲きにけむ墓の辺の白彼岸花ふれがたく過ぐ
小野興二郎
墓の前つどへる脚のかさなれりつわつわくろき一族の脚
春日真木子
墓の上雲と日のゐる日曜は旅人のごと吾子あそばしむ
坂井修一
ねっここでしちゃおっふゆの陽はほそくフロアにしろいお墓を映す
加藤治郎
父母の墓われを見つけてかがやけりあまたの墓をかき分けくれば
志垣澄幸
墓に詣でた人の祈りが白い彼岸花として咲いた、という小野興二郎の歌は、まことに詩的で美しい。また志垣澄幸の歌の心情(上句)もすばらしい。対して、春日真木子の歌は情景が不可解! 何を主張したいのか? また加藤治郎の歌は、お墓や故人を侮辱することのないように鑑賞することが求められよう。