天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

原爆の記憶(8/9)

原子力空母「ロナルド・レーガン」(web

  母と子が炎中に崩れゆきしなる被爆の瓦われとつながる
                     山田あき
  第七艦隊泊つる港の夕凪ぎよ恥じおそれなく原爆を積む
                     山田あき
  原爆にただれし甍を掘りおこしまた夏来ると全身に受く
                     山田あき
  天に二日(じつ)ありたる朝の凄じさ言ひし被爆者の声忘るなし
                     岡本淳一
  ページごと等しきリズムに繰られゆく被爆者名簿は虫干しされをり
                    春日いづみ
  炎天に荊の冠かかげいる原爆ドームをよぎるつばくろ
                     荻本清子
  眉枯れて生き残りたる顔顔のことしも暑き原爆忌越ゆ
                     築地正子


山田あきの一首目、三首目は、原爆被災地を訪れた時を思わせるが、背景は不明。二首目に出てくる第七艦隊は、アメリカ海軍の艦隊の1つで、原子力空母「ロナルド・レーガン」と艦載される第5空母航空団を戦闘部隊の主力とし、戦時には50〜60の艦船、350機の航空機を擁する規模となる。「ロナルド・レーガン」の母港は、横須賀海軍施設である。
岡本淳一の歌の「天に二日(じつ)」とは、太陽と爆発した瞬間の原爆とを指している。先に触れたように、広島の場合、上空600mで爆発した。当の被爆者は、爆撃機が飛んでくる空を、たまたま見上げていたのであろう。