天皇(2/2)
以下の作品は、いずれも昭和天皇に関わるものである。歴代の天皇の中で日本の運命を最も憂い、敗戦の責任を考え続けた人だったと言えよう。軍幹部に騙された、という思いも強かったようだが、統帥権は天皇にあったので、責任は逃れようがなかった。日本国民の中には、天皇の戦争責任を声高に言う人たちも少数いたが、大方は覚めた視点で以下のような歌を詠んだ。
天皇の赤子(せきし)というを否(いな)みたり生まれし能登に
父あり母あり 坪野哲久
天皇のいまさぬニツポン長嶋のをらざる巨人いづれか淋しき
島田修三
黄落の季をみ命たゆたへば天皇批判を子は収めたり
浅野まり子
天皇家の兄弟喧嘩横丁のうわさのように床屋は語る
小高 賢
馬並めて代々木大野に閲したる「猫背」の過去を訝りぬ子は
小高 賢
現人神(あらひとがみ)のち象徴と呼ばれ来しいち人(にん)の死もて
昭和の代(よ)了(を)ふ 結城千賀子