権力(1/2)
辞書によれば権力とは、「他人を強制し服従させる力。特に国家や政府などがもつ、国民に対する強制力。」とある。
短歌に権力という言葉が現れるのは、現代短歌においてである。戦前はとても使える雰囲気ではなかったであろう。
海こえてかなしき婚をあせりたる権力のやわらかき部分見ゆ
岡井 隆
権力に従順なるはみにくきか思うのみならば吾もしか思う
大島史洋
権力はここにおよばずむらがれる通草(あけび)の種の熟るるひそけさ
前登志夫
交叉点に笛鳴らし立つ 権力と言え末端は常にさびしく
鈴木諄三
権力の争ひによりいはれなく苦しむ民を映像に見る
佐藤志満
豊かなる世にありなれて人の飼ふ権勢症候群といふ犬あはれ
松生富喜子
権力の強制ありてうたふなら全濁音でうたへ君が代
高野公彦