権力(2/2)
特定の地位には、特定の権限が付与されているので、権限を行使する権力が伴う。つまりいろいろな場面に様々な権力が現れる。大勢の人たちの生活や運命を左右する権力が最も注意を要する。「権力」という言葉は、常に負や悪のイメージを喚起する由縁であろう。
権力の悪こそ憎し書きていし原稿をおきてデモせねばならぬ
和田周三
軍閥といふことぐらゐがしまひにてその後の権力は我知らぬなり
土屋文明
自民非自民非自民自民権力の行方を背(せな)に机を拭ふ
千代國一
人死にてかえることなしむごき死に多喜二葬(はふ)りし権力は生く
窪田章一郎
権力の論理は常に保守にして地位を追はれし趙紫陽かなし
三枝英夫
夫一人をもてあましつつ恣(ほしいまま)に老い耄けし権力者の晩年を読む
石川不二子
中傷に耐へて権力を超えること吾が人生の理想となしつ
阿部正路
[参考]小林多喜二(1903年(明治36年)12月1日- 1933年(昭和8年)2月20日)
日本のプロレタリア文学の代表的な作家。『蟹工船』を『戦旗』によって一躍プロレタリア文学の旗手として注目を集めた。だが、同時に警察(特に当時の特別高等警察)からも要注意人物としてマークされ始める。1931年10月、非合法の日本共産党に入党している。1932年春の危険思想取締りを機に、地下活動に入る。築地署に囚われ、拷問の末に死亡した。警察は「心臓麻痺」による死と発表。