天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

声を詠む(1/10)

万葉集事典(講談社文庫)

古典和歌では、動物の鳴き声に感動して詠んだ作品が多い。鹿、雁、かはづ、こほろぎ などのような例を思いつく。特に鳥類については例歌が多い。代表に万葉集をとってみよう。かなり詳しい調査がいくつかなされている。野鳥研究家で歌人 でもあった中西悟堂によると、
霍公鳥(ホトトギス)(156件)、雁(65件)、鶯(51件)、鶴(46件)、鴨(45件)、千鳥(25件)、カイツブリ(12件)、カラス(4件)、ヒバリ(3件)、モズ(2件)、シラサギ(1件)、ツバメ(1件) などとなっている。
これからわかるように、ホトトギスがとびぬけて多く詠まれたことが分る。
ただ現代の読者にとって紛らわしいのは、時代や、地域によって、さまざまな名称、漢字が当てられてきたことである。ホトトギスに当てられた漢字には、霍公鳥、蜀魂、蜀鳥、杜宇、杜鵑、時鳥、不如帰、子規、郭公 などである。
一番ややこしいのは、郭公と書いて「ほととぎす」と読ませる場合である。ホトトギスは、カッコウ目・カッコウ科に分類される鳥類の一種なのだが、両者は別物であり、鳴き声も違う。ホトトギス
「キョッキョ キョキョキョ・・」、カッコウは「カッコウカッコウカッコウ・・」である。
 ちなみにホトトギスは、『古今和歌集』では42首、『新古今和歌集』では46首が詠まれている。
鳴き声が聞こえ始めるのとほぼ同時期に花を咲かせる橘や卯の花と取り合わせて詠まれることが多い。