天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

声を詠む(4/10)

慈悲心鳥(webから)

  よもすがら声をぞはこぶ世々の人雲となりにし故郷の雨
                         正徹
  とる筆の尖(さき)も凍りてこの朝わが書く紙に声のあるかな
                       落合直文
  さ夜ふけて慈悲心鳥(じひしんてう)のこゑ聞けば光にむかふ
  こゑならなくに              斎藤茂吉


  屋根の上にちちと啼くとき天(あめ)高く切なきこゑは過ぎゆきにけり
                      前川佐美雄
  空にひびく鳥けだものの声に似てわれには鞭のごとき子の声
                       福田栄一
  装甲車に肉薄し来る敵兵の叫びの中に若き声あり
                       宮 柊二
  ひきよせて寄り添ふごとく刺ししかば声も立てなくくづおれて伏す
                       宮 柊二


慈悲心鳥はカッコウ目の鳥、ジュウイチの別名。右上の画像に示したが、全長約32センチ。頭・背は黒っぽい灰色、腹は赤褐色。日本では夏鳥で、他の鳥の巣に托卵する。鳴き声は「ジュウイチ ジュウイチ・・」と聞こえる。
宮 柊二に歌は壮絶である。実際に戦闘に加わった体験であろう。