天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

短歌の詠み方・作り方

『小池光 短歌講座』 仙台文学館から

文芸作品はすべからく修辞技法のたまものであるが、わけても短詩形の俳句や短歌においては、顕著な効果が現れる。それで初心の頃から、修辞にこだわり独自性を出そうと努力する。
このたび仙台文学館が編集・発行の『小池光 短歌講座』一式(2007年度〜2017年度、全11冊)を、隅から隅まで読む機会を得た。ここに説かれていることは、広くは修辞法に含まれるのだが、もっと基本的な短歌の詠み方・作り方である。短歌作法である。
受講者から寄せられた新鮮で多様な詠草に対する小池光さんの行き届いた鑑賞と添削例が示されている。そこここで涙ぐみながら読み終えた次第。
カルチャーの短歌講座を受講する機会が、日時の都合で無かったことを悔やんでいたのだが、この講座記録を読んで、やっと納得できたのであった。
ルールにまとめると多数になるので、以下ではほんの二、三例を紹介するにとどめる。また添削例は理解を容易にするが省略。関心のある方は、ぜひ原本をご覧頂きたい。

*特殊なことを具体的に言うのが短歌の得意技で、短歌の大きな力
  家の猫が蒟蒻ぬすみ食ひしこと奇跡のごとくいふ声のする
                     斎藤茂吉
*感想めいたことを一切言わないというのがすごく大事。
  全身の濡るる遅刻の少年が理由の欄に「濃霧」と書きぬ
                     小澤繁雄
  歯科の椅子に横たはりつつ思ひをり右の眦より涙が出てゐる
                     二宮冬鳥
*歌は全部平仮名で書いてみて、明らかに漢字でないとおかしいというところが見つかる
ので、そのところだけを漢字に直して歌にすればいい。