2019-01-16 知の詩情(11/21) 第四の技法は、雅から俗への展開。これは、先に触れたように斎藤茂吉から始まっている。本歌取やパロディ化にも通じる。 春の夜の午前三時に眼をあきてわれの体の和(なご)むことあり 斎藤茂吉『寒雲』 春の夜の夢ばかりなる枕頭にあっあかねさす召集令状 塚本邦雄『波瀾』 春の夜のすさびに来たるキッチンにわれ塩を舐む即興的に 小池光『草の庭』いずれも初句で優雅に詠いだしておきながら、二句以下で俗な話題に転じて、驚きや笑いを誘う。雅と俗の落差の活用である。これらの本歌は、よく知られているように、 春の夜の夢のうきはしとだえして嶺に別るるよこぐものそら 藤原定家である。 斎藤茂吉『寒雲』