天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

知の詩情(12/21)

 韻律についても、塚本から引き継いでいる。塚本は、周知のように句跨り・語割れ、七七五七七、頭韻、脚韻など多彩な試みをした。ただ、小池の場合は、句跨り・語割れの歌は多くない。数多い塚本の例から二首を。
  何に殉ぜむジュネ、ネロ、ロルカカリギュラと秋風潜る耳より鼻へ
                         『青き菊の主題』
  こちらへいらつしやいシャイロック陸(ろく)でなし梨の花チルチル・ミチル道
                            『泪羅變』
これらは尻取り歌であり、ダジャレになっている。この系統の小池の例を三首あげる。
  モーグルは瘤地滑降モービルは石油モーゼル『夕日と拳銃』
                        『滴滴集』
  猫籠を日なたにおけばひなた猫うらの日かげのひかげ猫けふ
                        『滴滴集』
  おもふつぼのつぼに入りつつ咳すれば咳のこだまの壷中居(こちゆうきよ)の人
                     『時のめぐりに』

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『青き菊の主題』(塚本邦雄全集)