天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

和歌の鳥(4/9)

 次は、万葉集だけに六首(短歌は二首)詠まれている「ぬえ鳥(鵺鳥)」について。この鳥は、スズメ目ツグミ科に分類されるトラツグミのこと。日本では留鳥として、本州、四国、九州の低山から亜高山帯で繁殖する。
 鵺(ぬえ) は古来、妖怪と考えられた。「ヒョーヒョー」という気味の悪い鳴き声が、平安時代頃の人々には不吉なものに聞こえたことから凶鳥とされた。
作品において、「ぬえ鳥」は「うら嘆げ」を導く枕詞。

  久方の天の川原にぬえ鳥のうら歎げましつすべなきまでに
                  万葉集柿本人麻呂歌集
  よしゑやし直ならずともぬえ鳥のうら嘆げ居りと告げむ子もがも
                  万葉集柿本人麻呂歌集

いずれも七夕の歌として詠まれた。
一首目: 「天の川原で(織姫は)偲び泣いて居られた。何ともどうしようもないほどに。」
二首目: 「直に逢えなくてもいいけど、“ひっそりと泣いているよ”とあの人に伝えてくれる子がいて欲しい。」

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ぬえ鳥