天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

和歌の鳥(6/9)

 新古今集には、鵲(かささぎ)を詠んだ歌が三首ある。鵲は、スズメ目カラス科の鳥。日本へは一六世紀末頃朝鮮から持ち込まれたとされ、筑紫平野で繁殖し、天然記念物に指定されている。なので、新古今集に詠まれた歌は、七夕の伝説に想を得たもの。

  鵲の雲のかけはし秋暮れて夜半には霜や冴えわたるらむ        寂蓮
  鵲のわたせる橋に置く霜のしろきを見れば夜ぞ更けにける     大伴家持
  彦星の行きあひを待つかささぎのわたせる橋をわれにかさなむ   菅原道真

 一首目: 「カササギが列なって天の川に渡すという空の橋――秋も終り近くなった今、夜になれば霜が降りて、すっかり冷え冷えとしているだろうなあ。」本歌が実は二首目になっている。本歌の内容の繰り返しになっていてあまり感心しない。
 二首目: かささぎの渡せる橋は、周知のように、天の川のこと。中国の七夕伝説では、織姫と彦星を七夕の日に逢わせるため、たくさんのかささぎが翼を連ねて橋を作ったとされる。
 三首目: 「彦星と織女星との出逢いを待って天の川にかけるというカササギの橋を、どうか私に貸してほしいものだ。」

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