和歌の鳥(7/9)
新古今集には、鳥の「鵜」を単独で詠んだ作品は、見当たらないが、鵜飼舟として以下の四首が詠まれている。
鵜飼舟あはれとぞ見るもののふのやそ宇治川の夕闇のそら 慈円
鵜飼舟高瀬さし越す程なれやむすぼほれゆくかがり火の影 寂蓮
大井河かがりさし行く鵜飼舟いく瀬に夏の夜を明かすらむ 藤原俊成
ひさかたの中なる川の鵜飼舟いかに契りてやみを待つらむ 藤原定家
一首目: 「もののふの」は「やそ」「宇治」の枕詞である。宇治川の夕闇の中に鵜飼舟が見える。その情景に感動した。万葉集の次の有名歌を本歌とする。
もののふの八十氏川の網代木にいさよふ波の行方知らずも 柿本人麿
二首目: 「鵜飼船がちょうど急流を棹さして越えてゆくあたりなのか、篝火の炎が乱れて小さくなってゆく。」
三首目: 「大井川を篝火を焚きながら行く鵜飼舟は、いくつの瀬に夏の夜を明かすのだろうか。」鵜飼舟の行く方のあやうさと悲しみのようなものを感じたのだ。
四首目: 「(中国伝承にでは月の中に桂の木があるという)桂川の鵜飼舟は、どのように前世に約束をして、闇の来世を待つのでしょうか。」