天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

和歌の鳥(8/9)

 山鳥は、キジ目キジ科の鳥で日本特産。本州・四国・九州の森林にすむ。新古今集山鳥を詠んだ歌は、以下の四首。

  さくら咲く遠山鳥のしだり尾のながながし日もあかぬ色かな    後鳥羽上皇
  雲のゐる遠山鳥のよそにてもありとし聞けば侘びつつぞぬる   よみ人知らず
  晝は来て夜はわかるる山鳥のかげ見るときぞ音はなかれける   よみ人知らず
  雲居より遠山鳥の鳴きて行くこゑほのかなる恋もするかな     凡河内躬恒

 一首目: 「桜が咲いている遠い山に棲む山鳥の枝垂り尾のように長々しい日も飽きない花の色だなあ。」 次の有名歌を本歌とする。
  あしびきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む
                      拾遺集・柿本人麿 
これから山鳥は、新古今集より前の拾遺集には、詠まれていたことが分る。
 二首目: 「雲のゐる遠山鳥の」は「よそにても」の序詞。「無事であるということを聞くと、それでも慰められて寝ることができる。」
 三首目: 山鳥は夜になると雌雄が別々に寝るとのことをふまえている。姿を見るだけで契ることのない人を見ると泣けてくる、という。
 四首目: ほのかな恋、秘めたる恋を歌った。「雲居より遠山鳥の鳴きて行くこゑ」までが「ほのかなる」の序詞。

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山鳥