天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

一茶俳句と古典(1/3)

一茶俳句には、芭蕉や蕪村の句に多く見られる古典(日本の古典や漢籍)を踏まえた
作品もある。芭蕉の『奥の細道』や『幻住庵記』を踏まえた句も多く見受けられる。

     象潟もけふは恨まず花の春
   *『奥の細道』「松島は笑ふがごとく、象潟はうらむがごとし」を踏まえる。
     蓮の花虱を捨(すつ)るばかり也
     空山(くうざん)に蚤を捻(ひねつ)て夕すずみ
   *いずれも『幻住庵記』「空山に虱を捫(ひね)つて座す」を踏む。
     門の木も先(まづ)つつがなし夕涼
   *『幻住庵記』「先づたのむ椎の木も有り夏こだち」に拠る。
     秋の夜や隣を始しらぬ人
   *芭蕉句「秋深き隣は何をする人ぞ」を踏む。
     宗鑑がたふばも見たか鉢敲(はちたたき)
   *芭蕉句「長嘯が墓もめぐるか鉢敲」のパロディ
     春風や鼠のなめる角田(すみだ)川
   *芭蕉句「氷苦く偃鼠が咽をうるほせり」を踏む。
     馬上からやあれまてとや時鳥
   *芭蕉句「野を横に馬牽むけよほととぎす」のパロディ。
     朝がほに涼しくくふやひとり飯
   *芭蕉句「あさがほに我は飯くふおとこ哉」を踏む。

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岩波文庫