平安・鎌倉期の僧侶歌人(11/17)
俊恵(永久元年(1113年)~ 建久2年(1191年)頃?)
風景と心情が重なり合った象徴的な美の世界や、余情を重んじて、多くを語らない中世的なもの静かさが漂う世界を、和歌のうえで表現しようとした。同じく幽玄の美を著そうとした藤原俊成とは異なる幽玄を確立したといえる。
[生活感]
すみれ草つみ暮らしつる春の野に家路教ふる夕づくよかな 林葉集
夕立のまだ晴れやらぬ雲間よりおなじ空とも見えぬ月かな 千載集
み吉野の山かき曇り雪ふればふもとの里はうちしぐれつつ 新古今集
狩人の朝ふむ小野の草わかみかくろひかねて雉子鳴くなり 風雅集
[旅の感懐]
かりそめの別れと今日を思へどもいさやまことの旅にもあるらむ 新古今集
*まことの旅:文字通りの旅、つまり二度と帰ることのない旅。
[人生観]
ながむべき残りの春をかぞふれば花とともにも散る涙かな 新古今集
参考までに藤原俊成の歌をいくつか次にあげる。
世の中を思ひつらねてながむればむなしき空に消ゆる白雲 新古今集
住みわびて身を隠すべき山里にあまり隈なき夜半の月かな 千載集
昔より秋の暮をば惜しみしが今年は我ぞ先立ちぬべき 長秋詠藻
思ひきや別れし秋にめぐりあひて又もこの世の月を見むとは 新古今集
俊恵の方が、透明度が高いように感じられる。仏門に帰依した功徳なのだろうか。