天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

水のうた(2/17)

  花ちれる水のまにまにとめくれば山には春もなくなりにけり
                     古今集清原深養父
*意味は「花が散って流れている川をさかのぼって、花を求めて来たところ、山には
 花もなく春さえもなくなっていた。」
  もみぢ葉の流れざりせば竜田川みづの秋をばたれか知らまし
                      古今集坂上是則
*紅葉でよく詠まれる竜田川は、奈良県生駒市生駒山東麓を源として南流、流域に
 生駒谷、平群谷を形成している一級河川
  みやまより落ちくる水の色みてぞ秋はかぎりと思ひしりぬる
                      古今集藤原興風
*「水の色」とは、水に乗って流れてくる紅葉の色だと解釈したらよいのだろう。
 秋の終わりになると枯葉が多くなる。
  おほぞらの月の光し清ければかげ見し水ぞまづこほりける
                     古今集・読人しらず
  侘びぬれば身をうき草の根を絶えて誘ふ水あらばいなむとぞ思ふ
                      古今集小野小町
  年をへて花の鏡となる水はちりかかるをやくもるといふらむ
                        古今集・伊勢
  水もせに浮きぬる時はしがらみの宇治の殿ともみえぬ紅葉ば
                        後撰集・伊勢

f:id:amanokakeru:20190521000239j:plain

竜田川