水のうた(4/17)
今はとも思ひな絶えそ野中なる水の流れはゆきてたづねん
新古今集・大中臣輔親
*古今集の「いにしえの野中の清水 ぬるけれど もとの心を 知る人ぞ汲む
(読人不知)」を本歌取りしている。野中の清水は、現在の神戸市西区の湧水
を指す。作者の大中臣輔親は、中古三十六歌仙のひとりで「拾遺和歌集」など
の勅撰集に31首がはいっている。
水やそら空や見ずとも見えわかずかよひてすめる秋の夜の月
新後拾遺集・よみ人しらず
早き瀬のかへらぬ水にみそぎしてゆく年波のなかばをぞ知る
新勅撰集・藤原良経
下くぐる水に秋こそかよふらしむすぶ泉の手さへ涼しき
新千載集・中務
*「下くぐる水」は地下水のこと。歌の意味は、「地面の下を潜って流れる水には、
ひっそりともう秋が入り込んでいるらしい。泉の水をすくい取る掌にまで、
秋の涼しさが伝わるよ。」
ちくま川春行く水はすみにけり消えて幾日(か)の峯の白雪
風雅集・順徳天皇
足引の山田のをぢがひめもすにいゆき帰らひ水運ぶ見ゆ
良寛
*「ひめもすに」は「ひねもすに」と同じで、一日中の意。
幾そたびかき濁してもすみかへる水や皇国(みくに)の姿なるらむ
八田知紀