水のうた(5/17)
涼しさをことの外にもひきくるは隣の水のしらべなりけり
井上文雄
*井上文雄は、江戸後期の国学者・歌人。江戸の人。徳川御三卿の一つ田安家に
侍医として仕える。医師をやめた後は歌人として独立。個性を重視し、用語の
自由を主張して、和歌の革新を用意したと評される。
赤土の日に照る庭に水打ちて濡れて黒きをしばし喜ぶ
窪田空穂
川の瀬に立つ一つ岩乗り越ゆと水たのしげに乗り越え止まぬ
窪田空穂
水よりも冷たき色をまとひつつ月は静かに秋となりけり
武山英子
*武山英子は、明治-大正時代の歌人。小学校,女学校の教師となるが病弱の
ため退職し,短歌の創作と国文学の研究に専念する。掲出歌は、傑作の一首。
石越ゆる水のまろみを眺めつつこころかなしも秋の渓間に
若山牧水
身は雲に心は水にまかすべう旅ゆくわれをとがめたまふな
吉井 勇
水かれてならべる瓶(かめ)のはちす葉の片なびきつつ秋の風吹く
会津八一