天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

水のうた(6/17)

  かなしみはつひに遠くにひとすぢの水をながしてうすれて行けり
                       前川佐美雄
*一筋の水に悲しみをのせた。
  藪かげゆ小舟にのりて水たぎつ鬼怒川わたりぬ春の寒きに
                        古泉千樫
*激流の鬼怒川を小舟で渡った思い出
  撒水のいち早く消え道白く過ぎし孤独の日に続きをり
                        島田修二
*水が消えた後の道に過去の孤独の日々を思った。
  春の水みなぎり落つる多摩川に鮒は春ごを生まむとするか
                       馬場あき子
*春の多摩川に生命力を感じた。
  青(あお)水沫(みなわ)五月は涼し女手に滅ぼししものいまだなかりし
                       馬場あき子
*青水沫とは、青い水の泡のこと。「みなわ」は「みなあわ」(「な」は「の」の
 意味の格助詞)の音変化。水の泡。はかないことのたとえにもいう。
  かすかなる一すじのしらべつづりつつ蛇口より落ちて地に光る水
                       大野とくよ
*一筋の水に調べを聞いた。
  ゆたかなる水のおもてに導きて舟着きの細き板のひとすじ
                        高安国世
*細い板を渡した舟着き場の情景

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