天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

水のうた(16/17)

  はるばると野中に見ゆるわすれ水たえまたえまをなげくころかな
                     後拾遺集・大和宣旨
  あづまぢの道の冬草茂りあひて跡だに見えぬ忘れ水かな
                     新古今集康資王
  岩間とぢし氷もけさはとけそめて苔の下水道もとむらむ
                       新古今集西行
  みむろ山谷にや春の立ぬらん雪の下水岩たたくなり
                      千載集・源 国信
*みむろ山(三室山)は、兵庫県中西部宍粟市鳥取県南東部若桜町の境にある山。
 標高 1358m。
  下くぐる水に秋こそ通ふらし掬ぶ泉の手さへ涼しき
                       新千載集・中務
  野に遠く光るは忘れ水ならむ絶ちし望みの蘇るべし
                          来嶋靖生

忘れ水: 野中などを絶え絶えに流れていて、人に忘れられた水。
下水、下くぐる水: 表面にあらわれないで物の下や物蔭を流れる水。秘かに思う比喩
に使われることあり。

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三室山