天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

時の移ろいー朝・昼・晩(2/4)

昼、真昼、白昼、昼下がり
 古代において「る」というのは、「状態」を表す語だった。昼は太陽が空にある間を意味するので、「日」と「る」から「ひる」となった。

  あかねさす昼は物思(も)ひぬばたまの夜はすがらに哭(ね)のみし泣かゆ
                     万葉集中臣宅守
*「明るい昼は昼で物思いにふけり、暗い夜は夜通し声を上げて泣けて
  くるばかり。」
  如何にしてよるの心をなぐさめむ昼はながめにさても暮しつ
                     千載集・和泉式部
  ひる過ぎてくもれる空となりにけり馬おそふ虻(あぶ)は山こえて飛ぶ
                         斎藤茂吉
  草枯の野のへにみつる昼すぎの光の下に動くものなし
                         島木赤彦
  みぎひだり背に寄りつくを負(お)ひ並(な)めて笑ひあふるる真昼の家に
                        伊藤佐千夫
  真昼間の蛍光灯の点滅のオフ・ビートまたオフ・オフ・ビート
                        藤原龍一郎
  さやぐ湖心、白昼の妻、撓(しな)う秀枝、業房に居て思(も)えばかなしき
                         岡井 隆
  天敵をもたぬ妻たち昼下りの茶房に語る舌かわくまで
                         栗木京子

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虻(アブ)