月の満ち欠け(2/4)
立待月: 日没からだいたい1時間40分後に出る月。月の出を「いまかいま
かと立って待つ」というところから付いた名称。
居待月: 立って待つには長すぎるので「座って月の出を待つ月」。
居は「座る」の意味。
二十日月: 更待月(ふけまちづき)とも。陰暦8月20日の月。午後10時頃に出る。
敷島や高円山(たかまどやま)の雲間よりひかりさしそふゆみはりの月
新古今集・堀河院
*高円山は、奈良市の春日山の南に連なる海抜432メートルの山で、歌枕。
山かげや嵐のいほのささ枕ふしまちすぎて月もとひこず
藤原定家
*山蔭の庵で嵐の夜、ささ枕に臥せて月のことを思っている情景。
もち月のころはたがはぬ空なれど消えけむ雲のゆくへ悲しも
藤原定家
郭公(ほととぎす)名をも雲井にあぐるかな弓張月のいるにまかせて
平家物語・藤原頼長
*平家物語の名場面である。頃は4月10日過ぎ、ほととぎすが二声・三声鳴いて、
雲間に飛んでいった。藤原頼長が「ほととぎす 名をも雲居に あげるかな」
(不如帰が空高く鳴いているが、そなたも宮中に武名をあげたことよ)と詠い
かけると、源頼政は右の膝をつき、左の袖を広げて、月を横目に見やりつつ
「弓張月の いるにまかせて」(弓を射るに任せて、偶然にしとめただけです)と
詠んで、剣を賜って退いた。
わが門をさしわづらひてねるをのこさぞ立ち待ちの月を見るらむ
藤原家良
われのみぞねられざりけるかるもかくゐまちの月のほどはへぬれど
藤原家良
このくれとたのめし人は待てど来ずはつかの月のさしのぼるまで
続後撰集・後鳥羽院
これら三首は、人を訪ねるあるいは待っている場面を、その時の月の状態にかけて詠んでいる。