天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

月の満ち欠け(4/4)

名月: 陰暦8月15日の月(芋名月)。また、陰暦9月13日の月(栗名月・豆名月)。

 

  天つ風雲ふきはらへなほ年にふたよの月は今宵ばかりぞ
                       高松宮
*陰暦8月15日と9月13日の夜の月を「二夜の月」というが、十三夜(後の月)のみ
 をさす時もある。

 

  名月や何の木もなき野阜(のづかさ)に二人と思ふ人あらはれぬ
                      太田水穂
*野阜は、野原の中で小高くなっている所。野にある丘。そこに二人に見える人が
 現れた。

 

  十五夜の月は生絹(きぎぬ)の被衣(かつぎ)して男をみなの寝し国をゆく
                      若山牧水
*「生絹の被衣して」は十五夜の月の作者の心象風景。

 

  強行渡河の夜は上弦の月照りて流氷白く渦巻きて居りき
                      渡辺直己
渡辺直己(1908年(明治41年)~ 1939年(昭和14年))は、広島県呉市出身
 の歌人広島県立呉高等女学校に奉職中の1937年(昭和12年)に、日中戦争
 ため召集され、中国に第五師団歩兵第十一連隊陸軍少尉として送られる。1939年
 (昭和14年)、中国河北省天津市で洪水により戦死した。

 

  ひしひしと空満ちおほふ花のおく満月は遠近のなくてうるほふ
                     上田三四二
  午後十時つたはりてくる音もなき吾家の空の十五夜の月
                      半田良平

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満月(望月、十五夜芋名月