天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

感情を詠むー「苦し」(2/3)

  世の中はうき物なれや人ごとのとにもかくにもきこえ苦しき
                   後撰集紀貫之
*「世の中は憂わしいことだ。人事の噂は、とにもかくにも聞き苦しい。」

 

  思ひやる方もしられずくるしきは心まどひのつねにやあるらむ
                  後撰集・読人しらず
  ひとりのみ恋ふればくるし呼子鳥声になき出て君にきかせむ
                  後撰集・読人しらず
呼子鳥: カッコウ(ただし、ウグイスやホトトギスだという説もあり)。

 

  こひするは苦しきものと知らすべく人を我が身に暫しなさばや
                  拾遺集・読人しらず
  いきたれば恋することの苦しきになほいのちをば逢ふにかへてむ
                  拾遺集・読人しらず
  まどろまであかすと思へばみじか夜もいかにくるしき物とかはしる
                       和泉式部
*本歌は、藤原道綱母蜻蛉日記)の「歎きつつ独りぬる夜のあくるまはいかに
 久しきものとかは知る」

 

  いかなればしらぬに生ふるうきぬなは苦しやこころ人しれずのみ
                   後拾遺集馬内侍
*うきぬなは: 浮いているじゅんさい。心の動揺することのたとえに使われる。

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ジュンサイ