感情を詠むー「笑う」(2/4)
笑ふより外はえ知らぬをさな子のあな笑ふぞよ死なんとしつつ
窪田空穂
*なんとも悲しい。死に行く子が笑う。その子は笑うこと以外は知ら
ないから、とは!
わが指紋ふたつあらめやと思ふときかそかにわれの笑ひたりしか
五島美代子
みづからを嘲笑(わら)ひゐたればその笑ひ鏡店のどの鏡にもある
真鍋美恵子
息せきて来つるをとめは肩被(かたぎぬ)の白きをはづしほほゑみにけり
岡野直七郎
腹ゆすり胸ゆすり声を立てにけり笑ひたるなりわが緑児は
窪田章一郎
ほれぼれと笑(ゑ)まへる伎楽の面(めん)見れば笑へ笑へとわれに言ふごとし
宮 柊二
ひとよりもおくれて笑うわれの母 一本の樅の木に日があたる
寺山修司
*上句と下句の取合せが絶妙。短歌が詩であることを改めて思う。