天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

感情を詠むー「笑う」(4/4)

  さみしさばかり語って語って何になる 笑顔の似合わぬ命などなし
                       田中章義
  しつぽりと地雨に濡るるマンションの お前さんたら笑(ゑ)壺(つぼ)に入りて
                      池田はるみ
  笑顔にてじっと見られていたと知る窓の向こうの秋の子二人
                       市原志郎
  二人ならば笑へると語り給ひたる今宵のことばさりげなかりき
                     大河原マス美
*二人ならば笑へるとは、どのような内容の話であったのだろう。

 

  みづからを笑ふともなくわらひつつさくらはなびらのうへ歩みゆく
                       中地俊夫
  ふところに月を盗んできたようにひとり笑いがこみあげてくる
                       永田和宏
*上句の直喩は、説明しがたいが、よく分る感覚であろう。

 

  わらふひととなりてしばらくよく笑ふわらふことすこし得意と思ふ
                       大谷和子

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桜はなびら