祈り、願い(2/4)
誠実に生きて祈れぬと言ひゆきしその夜の語気を抛てぬかも
河野愛子
*「誠実に生きて祈れぬ」とは? 「ぬ」は否定であろう。誠実に生きてきたが
神仏に祈る気持はおきない、ということか?
積もる雪の祈りに似たり僧院に仰ぐ青空ひんやりとあお
高橋禮子
*「積もる雪の祈り」とは? 似たりの主語は? 僧院における祈りを振り返って
の感想であろう。
焼あとにわれは立ちたり日は暮れていのりも絶えし空しさのはて
斎藤茂吉
桃の葉はいのりの如く葉を垂れて輝く庭にみゆる折ふし
佐藤佐太郎
国超えて声なき民の聡明を今はいのりの如く思はむ
近藤芳美
生死(いきしに)の界(さかい)離れし君なれどなほ千代ませと祈らるるかな
落合直文
耳澄ます人無きもよしみづからが祈りのために撞き鳴らす鐘
中原綾子