祈り、願い(3/4)
今夜(こよひ)の早く明けなば術(すべ)を無み秋の百夜(ももよ)を願ひつるかも
万葉集・笠 金村
*「共寝の今夜が早く明けてしまうので術もなく、秋の百夜のように長い夜を
願ったことだ。」この歌が詠まれたのは、春三月のこと。夜の最も短い頃で
あった。
ねぎごとをさのみ聞きけむ社こそはてはなげきの森となるらめ
古今集・讃岐
*「願い事(ねぎごと)をあんなにたくさん聞いている神社はそのうち嘆きの
森になってしまうことでしょうよ。」
願はくは花の下にて春死なんそのきさらぎの望月の頃
山家集・西行
*大変有名なよく知られた歌。
願はくはしばし闇路にやすらひてかかげやせまし法の燈火
新古今集・慈円
*「私の願うのは、出来たらしばらくこの闇路に留まって、天台の法灯を掲げ
たいということなのだ。」
願はくはわれ春風に身をなして憂ある人の門を訪はばや
佐佐木信綱
*作者の代表歌の一つ。
願ひはただ一つあり我死なん時いと晴やかに笑ましめたまへ
中原綾子
祈りなど持たざる我の日々のため春蒔く小さき種しまいおく
荻原喜久江