感情を詠むー「泣く」(4/5)
冬の雷鳴りつつ遠し泣き伏して見せるおんなについになりえず
俵谷晴子
ああわれは泣きたくなって午前二時寝入り間際のでんぐり返り
道浦母都子
泣きながら鮨喰ふ顔を見られをり心尽くして庇はれまいぞ
大口玲子
*上句の情景は、男からするとまさに庇いたくなる。それは女にとっては
本意でない、という。
頭から溶くる氷柱(ひょうちゅう)全身で泣くということかつてありしや
石田比呂志
*初句二句は暗喩であろう。
電柱に両手ひろげて抱きついて泣きたいような月夜の道だ
石田比呂志
タオルがないと泣けないという男の子うろうろタオル探しておりぬ
進藤多紀
*男の子の育ちが想像される。
大空ゆ哭きたくなりて降る幹がつぎつぎ着地して杉林
渡辺松男
*作者の感性で詠んだ歌だが、共感しにくい。