感情を詠むー「悔しさ」(3/4)
さながらに悔の連鎖とおもふまでベッドをめぐり雨の音する
大野誠夫
*第三者が見ると異常に思うだろう。
知れるかぎりの吾がみづからの悔しみに歩みてをりて小さく叫びき
河野愛子
*これも第三者からは、異常に見える。心の状態が行動につながるのだ。
われの一生(ひとよ)に殺(せつ)なく盗(とう)なくありしこと憤怒のごとしこの悔恨は
坪野哲久
汝を逝かせし日の夕茜悔いしより狂言綺語になじまずなりぬ
春日井瀇
*狂言綺語: 誤ったたわ言,むやみに飾り立てた言葉のことだが,和歌や物語
などを卑しめていうのに用いる表現。
さまざまに半生の過去悔やめども朝床に老涙したたりなさず
佐藤佐太郎
こころより悔(くやしみ)が湧(わ)くときありて昼のあひだ泪いでむとす
佐藤佐太郎
しどけなきあかるさのなか雨降れば散りし牡丹は悔しみに似て
安田章夫