天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

感情を詠むー「恨み」(6/6)

  今さらに賜びし広野ぞうらまるる夢みだれては若き花守
                       相馬御風
*分かりにくい。若き花守は広野を賜ったのだが、夢に苦しめられた。広野に植えた
 桜の面倒をみる大変な仕事の夢をみたのであろうか。相馬御風は、明治〜昭和期の
 詩人、歌人、評論家。早大校歌、童謡「春よ来い」の作詞者。

  うちとけていま一度も語らはば恨とけましを今は世になき
                      佐佐木信綱
  怨念を遣る太鼓とぞ燃ゆる火の炎の中に打ちてはげしき
                       岡部文夫
  恨みつらみ書いて残して何になるなべては時の過ぎゆきのまま
                       清水房雄
  たぶん僕も怨みを呑んで死ぬだらう今からそれを言つて置かねば
                       清水房雄
  言ふだけで言はるることのなき人が言はるるときの恨みは深し
                      花山多佳子
  刃物屋はひとの怨みをうる店とおもふまひるに虹がたつなり
                       水城春房
*上句はなんとも物騒な感情だが、刃物による傷害事件が多いこの世なので、虹の
 たつ自然が貴重に思えるのだ。

 

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刃物屋