感情を詠むー「怒り」(2/6)
うつそみの深きさだめと思ひつつわが下心つねに怒れり
三ヶ島葭子
*「うつそみの深きさだめ」も「下心」もいろいろあるので、全体が観念的に
なってしまった。
この夜をつひに怒りてわれは寝る怒れど床(とこ)に平たくなりて
柴生田稔
*下句の情景が愉快でありまた悲しい。人間であることを考えさせられる。
今の世を怒れと金剛力士像怒れり肋(あばら)の骨もあらはに
窪田章一郎
怒るべきものを怒れといにしえの金剛力士像ひとつ立つ
窪田章一郎
うるわしき命のかたち山に見てはてはさびしき世を怒る者
窪田章一郎
*山は自然の代表・象徴として詠まれているようだ。
病む子らが描きてくれたるわが顔は怒れるならむ青くぬられぬ
福田栄一
家も子も構はず生きよと妻言ひき怒りて言ひき彼の夜の闇に
高安国世
*上句がなんともすさまじい。奥さんの怒りを買った態度や言葉が想像される。