感情を詠むー「怒り」(4/6)
男ありゆうべのやみのふかみにて怒れるごとく青竹洗う
伊藤一彦
怒りこそわが生きの緒の痣ならむ暁(あけ)の雲雀のこゑに目ざめて
小中英之
*「生きの緒の痣」は、命の傷跡と解する。
怒りをいえ怒りを抒情の契機とせよ今つきつめて「詩」といえる営為
近藤芳美
*詩の源泉、原動力を怒りに求めよ、との主張。
見抜かれぬほどに抑へし怒りなり夜空あふぎて風花を食ふ
安田純生
*風花: 晴天に、花びらが舞うようにちらつく雪。
わが怒りこれくらゐなり五百円の湯呑を床(ゆか)に打ちつけて割る
安田純生
怒気多くなりゆく日々の蒼ざめる心臓に似て茂る蕺草(どくだみ)
西村 尚
*ドクダミの茂りをじっと見ていて詠んだ歌であろう。
論理などめちゃくちゃな汝が怒りにて裸形の怒りが顫えておりぬ
永田和宏
*「裸形の怒り」とは、裸のままで怒っている姿を想像してしまう。